このページにご登場いただいた稲見さんが令和3年2月に亡くなりました。世のため人のため、どこまでも奔走する人でした。どうぞ安らかに。合掌
倉敷市で昨年9月に発足したばかりなのに、すでに10社もの食材提携先をもち、発足以来わずか半年で数トンもの食材を集めているフードバンクがあると聞きました。
しかも集めた食材や物品を、お寺を拠点に循環させることを企画中というではありませんか。
代表理事の稲見圭紅さん(写真右)と、理事の藤原巧さん(写真左)にお会いしました。
稲見「私がフードバンクを始めた観点は〝福祉〟ではなく〝環境〟なんです」
え? 名前が福祉会なのに、福祉の観点ではないの?
鋭いかたは気づいたかもしれません。この矛盾が大きなミソなのです。
福祉施設を運営している稲見さんだからこそ、フードバンクをやるなら福祉の観点ではだめだと気づいたのです。
稲見「福祉の観点でモノを見る人は、〝どうせ廃棄されるものだから恵んであげる〟という言いかたになるでしょう。それ、福祉に携わる側からしたら〝絶対にもらいたくない〟ってなるわけですよ。
でも私は、ともかく廃棄されるモノを減らしたい! という環境の観点で食品を集め、〝お願い、もったいないから使うて!〟と言って回るんです。つまり、もらいに来てほしい人には困窮している人ばかりでなく、お金持ちも含まれます。〝誰でもいいから、使うて〟、〝もったいないという意識をもてる人、集まろう!〟なんです。
経済的に余裕がある人にも、いますぐ食べるなら賞味期限の迫ったものから買う、必要なだけ買う、ということを根付かせて、世の中の無駄を減らしたいんです」
なるほど。そういわれたら、タダで食品やモノをもらうといっても恥じる必要がありません。
企業の側からしたら、箱にほんの少しの印刷ミスがあったり、鍋のフチがちょっとだけ凹んでいたりするだけで、店頭には並べられない「不良在庫」となります。
でも使えるんだから、食べられるんだから、「それは私たちからすると、不良品ではない!」
多少の訳あり商品も、流通に乗った以上は使命をまっとうさせたい。
……その思いは、〝可能な限りの能力を活用させたい〟という福祉ベースの視野に裏打ちされていると感じました。
現在、関西圏の複数の大手スーパーをはじめ、全国展開するチェーンや、食材だけでなく雑貨を扱う企業などとも提携。
しかも、集めた食材や雑貨を配布するスピードが非常に迅速。
施設の人材や地域の学生を起用して、地元スーパーが「消費期限残12時間」で見切り品とした惣菜などを、その日のうちに配り終えます。
藤原「食材が集まりすぎて、配布する場所探しが大変になってきています。そこで目をつけたのが、地域のお寺。お寺はそもそも施し・施される場所なので、〝もったいないから、ここを拠点にグルグル回しているよ〟ということがなじむと考えたんです」
岡山にはもともとしっかりとしたフードバンクがあります。でも食材の提供を受けるには、取りに行かないといけない。ほんとうに困窮している人は、取りに行く足代がないという話を聞きます
ご覧のように、フードバンクといっても食材だけでなく、さまざまなものが寄せられています。
稲見「廃棄・焼却される運命にあるこれらの物品を、サルベージして使う人のところへ循環させてくれる仲間や人と、どんどんつながりたい」
関西・近畿・四国地方のお寺さまや仏教会で、このことを知り「ぜひ協力したい!」というかたがいらっしゃれば、ぜひご連絡くださいとのこと。
藤原「倉敷まで物品を取りに来るガソリン代さえ持っていただけたら、どんどん共有します」