お坊さんと、常識を覆して生き生きしよう!

“直葬”改め、“シンプル葬”?

直葬に違和感ありますか?

「直葬」という言葉が定着しはじめているけれど、みなさんは違和感ありませんか?

もとは、警察扱いになったご遺体を、「斎場を経由せず火葬場へ」移動させる場合に、「直接送る」の意味で「直送」と称した警察用語が、チョクソウのはじまりのようです。

昨今、葬儀の小規模化・低廉化から、一般のご葬儀においても
祭壇を設けての通夜や告別式を行わず、
火葬場でお見送りをするという形を望まれるかたが急増したため、
「送」という文字ではいかにも遺体処理のようなので、
「葬」の字をあてて「直葬」と呼ばれるようになったようです。
(以上、葬送分野の建築家Y先生からうかがいました)

「“直葬”は、“直接火葬場へ”の意味であり、“直接葬儀”ではない。
僧侶を呼んで読経してもらうなり、なにかひとつでも“儀礼”の要素が入ったなら、“直葬”とはいわない」
というご意見もあります。
(日本葬祭アカデミー教務研所長 二村祐輔氏)

“葬送”から、従来の儀礼的要素が排除され、たんなる遺体処理のような形が横行してしまうことへの警鐘といえます。

賛否両論

いっぽう、さきほどのY先生や多くの葬儀社は、
“直葬”を基本に、お坊さんを呼んだり、花を飾ったり、 それぞれに儀礼を加えてアレンジしていけばよい

との考えで、いわば“基本となる最もシンプルなプラン”を定義して“直葬”と称しています。

余分なサービスから削っていくのではなく、シンプルに“火葬のみ”のプランから、
故人や遺族の趣向にしたがって、写真でのメモリアルや音楽でのお見送り、あるいは読経など個々の予算とプランに合わせて企画していくのがこれからの葬儀。

そのオリジナルプランという考えそのものには、私も賛成です。

見送った側が自己肯定できればOK

しかし、“自分の親を見送ったときは、直葬だった”と、喜んで話せる人は、案外少ないのではないでしょうか?

「自分の葬儀は直葬でいい」(子や孫に余計な負担をかけたくないから)
と語るかたは、昨今たしかに多いです。

でも、送る側にとって、“直葬”という言葉は、あまり印象のよいものではありません。

たとえば、
「直葬だったけど、お坊さんも来て、ちゃんとした葬儀だったよ」
というように、否定的な印象で語られることのほうが、まだまだ多いのではないでしょうか。

ひと昔まえ“密葬”と呼ばれたものが、“家族葬”へと形を変えていったように
“直葬”に代わる、なにかもっとあたたかみのある言葉はないものでしょうか。

シンプル葬?

無飾葬??(祭壇で飾らない、という意味の)
各葬儀社さんでも、

「火葬式(一般葬・家族葬と比較して)」
「火葬場待ち合わせプラン」
「炉前密葬」

などなど、工夫されたプラン名を打ち出していらっしゃいますが、
マスコミの表現は、まだまだ“直葬”一本槍です。

みなさんも、ぜひ一考されてみてください!

この記事を書いた人
『いいお坊さん ひどいお坊さん』(ベスト新書電子版, 2011)、『心が軽くなる仏教とのつきあいかた』(啓文社書房, 2017)ほかの著者、勝 桂子(すぐれ・けいこ)、ニックネームOkeiです。 当サイト“ひとなみ”は、Okeiが主宰する任意団体です。葬祭カウンセラーとして、仏教をはじめとする宗教の存在意義を追究し、生きづらさを緩和してゆくための座談会、勉強会を随時開催しています。
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